戸籍の身分記載に悩まされる

家系図 ルーツ

第73

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1.家系図ニュース~戸籍は必ずしも実態を表さない?
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こんにちは、行政書士の丸山学です。

いやあ、それにしても暑いですね。私はこの夏も日本各地に現地調査に出向いていますが、どこに行っても暑くて閉口させられます。

調査をしている最中は緊張感からか疲れも感じないのですが、帰りの電車や飛行機では死んだように眠っています…

最近、「江戸時代生まれの人が現在も生きていることになっている」などと戸籍に関するニュースが聞かれます。死亡届が出されなければ戸籍上は生存している事になる訳で、全国的にみれば確かに実態に即して死亡届が出されないことも多々あろうかと思います。むしろ、よく今まで問題にならなかったとものだと不思議に感じます。

ところで、こうした事からも分かる通り戸籍は必ずしも実態を正確には表わしません。現在では、引っ越しても本籍地の変更を忘れていて、まったくの他人が住んでいる住所地が本籍地になったままという方も多いようです。それでも大抵は住民票はきちんと変更をするので、住所の実態は住民票でなんとか確保されています。

ところが、住民票のない明治・大正時代でも「引っ越して別の場所に住んでいるのに本籍地は変更していない」という事は頻繁にありました。住民票のない時代にそのような状態になると人の居住地の把握が出来ずに行政管理上困ったことになります。

ですので、実は明治大正時代も現在の住民票に該当するものが存在していました。それが『寄留簿』といわれるものです。現在では取得できませんが、ご先祖探しの中で寄留簿に出会う可能性もありますので「寄留」という言葉は覚えておいた方がよいと思います。


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2.戸籍の身分記載に悩まされる
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戦前までは戸籍に「士族」「平民」という身分記載が普通にされていました。ですので、今でもそうした古い戸籍が箪笥の奥などから出てくると、すぐに江戸時代中の身分が分かったりします。

当事務所に家系図作成・ご先祖探しをご依頼される方のなかにも、「古い戸籍が手元にあるんです」と言って、送ってくださるケースが多々ありますが、身分記載があるものが結構ありますね。

現在取得する戸籍(除籍)では「士族」「平民」とかつて書かれてあった部分は白く抹消されているのですが、それでも実は本当に稀に「消し忘れ」があります。

先日、『200年たどるコース』の案件で取得した古い除籍簿に、まさに「平民」と書かれていました(と、いいますか消し忘れていました)。という事は武士ではないという結論になるのですが、ご依頼人に聞きますと、「ちょんまげを結っていた」「武士だったような話が伝わっている」と、おっしゃいます。

また、別の『200年たどるコース』では、戦前に取得した戸籍をお待ちで、そこには身分記載が「平民」と書かれています。そして、その本籍地は北関東の某城下町ですので、江戸時代後半の城下町絵図を探して閲覧してみました。その城下町絵図には家が一軒一軒、当主の名前入りで書かれ
ています。

古い戸籍の本籍地あたりと考えられるところに、まさにその家が江戸時代中に代々名乗っていた当主名(墓石調査でその家の代々の当主名は既に分かっていました)と同姓同名の名が記されていました。

当然、その絵地図に出てくるその名前、その家はご依頼人の先祖のものであろうと考えられる訳ですが、しかし、城下町絵図に記載されている当主名というのは基本的に藩士(武士)のものです。 という事は、ご依頼人の家の江戸時代は武士だったと考えられるのですが、古い戸籍にははっきり「平民」と書かれています。

この両案件とも戸籍の身分記載と家の言い伝え、あるいは絵地図の記載が矛盾することになっています。しかし、こういう事も考えられます。

ご先祖が一代限りの藩士(それも足軽等)であったという事です。一代限りの卒族(足軽等の家)の場合、その後に平民籍となっています。ですので、江戸時代中に武士でありながらも戸籍には「平民」と記載されるということもある訳です。

古い戸籍に「平民」とあっても、念のため藩士(武士)の記録にもあたってみると意外なことが分かるかもしれないですね。