検地帳に貼付された紙を見逃さない

家系図 ルーツ

第128号 (2015年10月31日) ※読者数7,199人

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1.家系図ニュース~当メルマガ読者数、7千名を超えました~
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こんにちは、行政書士の丸山学です。

おかげさまで最近は当メルマガ読者数も増えており、現在7千名を超えました。たまたまであれ、こうして読者になっていただいたのも何かの縁ですね。末永く宜しくお願いいたします。

当メルマガでは、私が仕事としてご依頼を受けた先祖探し・家系図作成業務の様子を綴っています。何かのお役に立てれば幸いです。

尚、私の方はこの仕事を専門にしておりまして一年中、全国各地に出向き調査をしております。下記はそうした中から得たノウハウを書き綴った拙著(入門書)です。
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2.検地帳に貼付された紙を見逃さない
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ここ最近、「やっぱり先祖探しに検地帳は役立つなあ~」と実感する案件が続いています。

ご先祖様を深く辿っていく場合、まず基本となるのは戸籍を古いところまで漏れなく取得していく事(これは、いつも書いている通りですね)。それにより、大体は幕末を生きたご先祖様名まで明らかになります。

問題はそこから先です。戸籍など存在しない江戸時代の先祖探しです。

何しろ現代に通じる政府などない時代であり、まだ「幕府」なるものが国を治めていた時代劇の世界の話です。そう簡単にはご先祖様をたどれません。

江戸時代を遡るには古文書と呼ばれる江戸期に作成された様々な文書を探して、そこにご先祖様の記録を探していくしかありません。
主だった古文書として各村で毎年作成されていた「宗門人別帳」というものがあります。現代の戸籍に近い帳面です。

そうした宗門人別帳は現存しているか否か、その村(現在の大字に相当する地域)ごとに全く異なります。現存していたとしても江戸時代後期の数冊(数年)分というケースが多く、なかなか人別帳で江戸時代初期のご先祖様名まで明確にする事は困難です。

そんな時に役立つのが、やはり村ごとに作成されていた「検地帳」です。歴史の教科書には検地役人が竿を持って田畑の広さを測っている絵が載っていましたよね。
あれは、村中の全ての田畑(正確には屋敷地も)を全て図り、年貢を課税する為の台帳を作成している訳です。

ですので、村ごとに検地帳は作成されて、そこには田畑一筆ごとに広さや所有者(耕作者)の名前が書きだされています。つまり、ここにご先祖様のお名前も記載されている訳です。

…但し、検地帳というのは人別帳と異なり毎年作成される物ではありません。

村中の大がかりな検地は江戸時代初期に行われており、現存しているのも、ほとんどが江戸時代初期の分です。

江戸期は公文書には庶民は名字が記載されませんでしたので、そうなると江戸時代初期の検地帳を見ても、一体どれが自家のご先祖様なのか分かりにくいという問題が起きます。
江戸時代後期の物であれば、戸籍で判明した最も古いご先祖様名と照合できますが、そういう訳にもいきません。

なので、江戸時代初期の検地帳は「ご先祖探しには役立ちづらい」という印象を持ってしまいます。しかし、意外とそうでもないのです。

江戸時代初期の検地帳をよ~く見てみますと、所有者(耕作者)名の所に別の紙が貼付されていたり、朱書きで何やら書き込まれているケースがあります。
検地は大変な作業ですので頻繁に行うことは出来ず、江戸時代初期に作成された物をベースにしてその上に新たな情報を書き足す、あるいは紙を貼付していくのです。

そして、そうした貼付された紙や朱書きで最新の所有者(耕作者)名が書かれており、それが明治初期のものであるケースも多いのです。
明治初期の当主名が記載されていれば、戸籍で判明したご先祖様名と照合できますので自家のご先祖であると分かりますし、さらに検地帳作成当時である江戸時代初期からのご先祖様名の変遷が分かるという事になります。

全てがそのようになっている訳ではありませんが、ここ最近の2案件ではいずれもそのような形で、それまで不明であった江戸時代初期のご先祖様名を新たに確認できました。

検地帳といっても、必ずしも「検地帳」という名称の物だけではなく「田畑名寄帳」(これは、村の一人一人の名前を書き出し、その人の所有する田畑を羅列した帳面)という物でも同じように紙の貼付や朱書きで情報の更新が行われているものがあります。

ですので、行政機関(博物館や文書館など)で当該村の古文書を閲覧する際には、江戸時代初期の物だからという理由で検地帳を外さないこと。また「名寄帳」など田畑の所有者名が書き出されていると推測できる史料も外さないこと。
さらに、そうした文書を見る際には貼付された紙、朱書きされた情報も注意深く確認する事を忘れてはいけません。

もしかすると、それにより一気に江戸時代初期(約400年前)のご先祖様まで行き着く可能性がありますし、そのお名前が武士っぽい名前(「内蔵助」や「兵庫」など地名の入ったもの等)だったりすると、戦国時代までの武士で江戸時代初期に帰農したものかな? などと想像も膨らみます。